第1章 水月
竹刀先生も立ち上がり、再び目が合う。
「あの、本当にありがとうございます。このお礼は必ず...」
「必要ない」
ぴしゃりと言い切った後、今度は私の倒れている自転車を起こしてくれた。
冷たい物言いなのに行動は優しい...
ますます推してしまう...
「あぁ、自転車までっ...すみませんっ」
慌てて自転車を受け取ると同時に、竹刀先生がいった。
「下を見ろ」
「へ?」
言われるがままに下を見る。
特に何もない。
「???」
訳がわからずもう一度竹刀先生をみると、難しい顔をしてこちらを見ていた。
「...痛ければ、医者にかかれ」
そう言うが否や竹刀先生はくるりと踵を返して落ちていた竹刀を拾って元の位置に戻ってしまった。
なんとなくこれ以上は声をかけれず、改めて竹刀先生に会釈をし自転車を引いて職場に向かった。
一緒にすっ転んだ相棒は、カゴは歪みところどころに傷がついており、たった今推しの目の前で転んだショックも加わってとても漕いでいく気分にはなれなかった。
仕事を終え家に帰宅した私は、恥ずかしさと推しのかっこよさに悶えまくった。