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すいめいのひと

第12章 水の綾



天然とは恐ろしい
あんなことを恋人でもない女にやるなんて
しかもなんだあの色気
まだ朝だぞ
私は昼までにあと何回死ぬのだろうか…

「……怒っているのか…?」

私がなかなか顔をあげないから、不安になってきたのだろう。

ちげぇよ
あんたの濃艶な仕草に死んでんだよ

まだ顔の熱が引いてないので、私は机に突っ伏したまま喋る。

「ぎゆうくん…」

「なんだ」

「…どうして私の唇触ったの?」

「…名前の口についたパンを取ろうとしたら、指に触れた唇が柔らかいな、と思い…もっと触りたくなってしまった…」

なんだその理由
柔らかいのが好きならスクイーズでも触ってろ!!

「…そういうのは、恋人にやるやつです…」

「………」

「恋人でもない女にやってはいけません」

「すまない…」

義勇くんの声色が明らかにしょんぼりした。
いつもの私ならここでよしよししてしまうが、今回ばかりはダメだ。
あんなのをしょっちゅうやられたら本当に心臓発作が起きそう。

やっと顔をあげ、義勇くんを見る。

「名前…デコが赤いぞ」

「思いっきりぶつけましたからね」

「なぜそんなことを…」

「義勇くんのせいです」

「!」

心外!って顔してんじゃねぇよ

「ところで、義勇くんはパン食べないんですか?」

「…いや…俺もいただこう」

義勇くんがパンを一つ手に取った。

しめた!
推しとはいえ5つも年下にやられっぱなしは癪だ!
仕返ししてやる…!
さぁ!パン屑をつけろ!
義勇くんみたいなやつはやったら私が死ぬからソフトなやつにするけど!!
と意気込んだものの…



「……わぁ〜…」

いざ義勇くんがパンを食べ始めたら、パン屑を拭うどころじゃなかった。
ポロポロこぼしまくるわ、口周りにめっちゃついてるわ…
さすが弟属性…

「…俺の顔になにかついているか」

「めっちゃついてるよ義勇くん」

「む」

む、ってなんだよかわいいな

「もー、失礼しますね」

私はテーブルに置いてあったティッシュを数枚とり、義勇くんの口元を拭いた。
彼はそれを黙って受け入れた。
そうされるのが当然とでも言う様に。

(この子私の弟だっけ?????)

本当に天然は恐ろしいと改めて実感し、私はため息をついた。

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