第12章 水の綾
質問は終わったけど、これでお詫びとするには不十分すぎるので私はもう一度ちゃんと詫びたいことを伝えた。
案の定義勇くんは断った。
引き下がるわけにはいかないので食い下がり、かなり強引だが、お昼に鮭大根をご馳走することで落ち着いた。
落ち着いた後で、これだとお昼まで義勇くんと一緒にいることになると気づいた。
朝の時点で推しの尊さに死にまくってるのに!!!
これが昼まで!!!!
うぉおおおと頭を抱えていると、先ほどリビングを出て行った義勇くんが戻ってきてとんでもないことを言い出した。
「風呂に入りたいだろう…これを使えばいい」
差し出されたのは男物の服…
え…?
…………え?
推しがいつも使ってるお風呂に入って、推しがいつも着てる服を着ていいってこと……???
私って前世でどれだけの徳を積んだのだろう。
世界を救ったとかだろうか
絶対に正気じゃいられなくなるので普段なら全力で遠慮するところだが、
汗をたくさんかいていたし、さすがにお風呂に入ってない状態でお昼まで推しと一緒に過ごすのは女としても問題があるのでありがたく使わせていただくことにした。
浴室に入ると、せっけんの良い香りがした。
義勇くんがいつも使ってる浴室…
義勇くんが、ここではいつも裸になる…
あ、だめ、もうのぼせる…
急いでシャワーを頭からぶっかけ、冷静になる。
すごいなぁ…通勤の時に挨拶をするだけの関係だったのが、今は家に泊まらせてもらってお風呂まで借りてる…
そうだ、泊まったんだ、私。
義勇くんの家に。
まじで夜の記憶ないのもったいなさすぎる…!!!!
後悔の念も一緒に洗い流すように、急いで頭と体を洗い、浴室を出た。
用意されていたバスタオルを使わせてもらって、借りた服を広げてみる。
スウェットのセットアップのようだ。
…当たり前だけど、大きい…
服に顔を埋めて、すぅと軽く息を吸ってみた。
朝の布団と同じ澄んだ匂いがする。
私は静かに悶えた。
着てみると当たり前に大きかったが、下はウエスト調整できるタイプだったので紐を限界まで絞って結んだ。
上の袖はキョンシーみたいだし、下の裾は将軍みたいだ…。
改めて義勇くんの手と足の長さに感心する。
「ありがとうございました…」
リビングに入ると、義勇くんがこちらをみてまた表情を強張らせた。