第11章 漣
「はっきりとは言わなかったが…不死川の名を呼び、好きだと、寝言で言っていた」
待ってほしい
なんだその寝言
有り得なさすぎる。
たしかに彼のメロさに萌えたことはあるが、好きとは別だ。
本当に私はそんなこと言ったのだろうか。
寝言だとしても信じられなさすぎる。
「…ちゃんと名前を呼んだわけではないんですね?」
「…聞き取れたのは…"しな"と、"せんせい"だけだが、それだけで十分だ」
不死川以外にいない…と彼が呟く。
おかしい。
普段私は不死川さんを、不死川"先生"とは呼ばない。
それなのに夢の中で呼ぶだろうか
義勇くんの話だと、私が言ったのは"しな"と"先生"……
……心当たりがある。
義勇くんの名前を知るまで、心の中で呼んでいた彼のあだ名。
そして今突然思い出したが、私は寝ている間にもう一つ夢を見ていた気がする。
義勇くんと出会ったばかりの頃の夢を。
…つまり…
あ、やばい、墓穴ほったかも
「…不死川さんのことは、人として好きです。でも恋愛対象ではないから…だから寝言で呼んだのは不死川さんじゃないですよ」
「…本当か?」
「はい、絶対」
「…そうか」
義勇くんはほっとした顔で微笑んだ。
んんんんかわいぃいい
「…ではあれは、なんと言っていたんだ?」
「めんまの夢を見ていた気がするので、多分『しなちくセンセーション素敵』って言ったんだと思います」
「…それはどういう意味なんだ」
「謎です」
「謎か」
あぶねーーごまかせたーー!!
義勇くんが超天然で助かった…!!
こんなんバレたら恥ずかしすぎるもんね!!
「もう一個の聞きたいことはなんですか?」
「……」
尋ねると、義勇くんはまたもじもじした。
さっきから可愛すぎる。
可愛すぎてキレそう。
「……名前と、呼びたい…」
「………」
「いいだろうか…?」
「………」
「……?」
「……ハッ!!」
「?!」
推しが目元赤くして上目遣いで呼び捨てで呼びたいなんておねだりしてきたから一瞬意識失ってたわ。
恐ろしい…恐ろしい男だわ冨岡義勇…!
「全然好きなように呼んでください!」
「いいのか」
「うん!」
「…名前」
推しに嬉しそうな顔で名前を呼ばれて私は心臓が押しつぶされ脳内でのたうち回った。