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すいめいのひと

第10章 泡沫



スゥ…

寝息が聞こえる…
俺は今、猛烈に困っている。
酒が回って辛そうだった名前さんを公園のベンチに座らせたら、ものの数秒で眠ってしまった
まだ彼女の家の場所を聞けていない…

軽く肩を揺らして声をかけるが起きる気配はない
どうしたものか

寝顔を見ると、酔いで気分が悪いのか眉間に皺が寄っていた
辛そうだ
こんな場所ではなくちゃんと布団の上で寝かせてやらねば…

背に腹は代えられない。
ここからなら、俺の家が近い
彼女が目を覚ました時に引っ叩かれる可能性もあるが、それは甘んじて受け入れよう。

俺は彼女を抱き上げ、自分の住むアパートへと向かった。


*****


アパートにつき、彼女を片腕で抱え、空いてる方の手で鍵を回し玄関を開ける。
雪の日に転んだ彼女を受け止めた時にも感じたが、相変わらず軽い。
ちゃんと食べているのだろうか…。

家に入り、彼女の靴を脱がせ自分の靴も脱いだ後、寝室へ行きベットに彼女をそっとおろした。

自分のベットで横たわる彼女を見ていたらなんだかよくない感情が込み上げて来そうだったので、すぐに寝室を出て手と顔を洗うため洗面所に入る。

顔を洗ったあと、洗面所の鏡を意味もなく眺めながら、飲み会での出来事を思い返す。
店にやってきた名前さんを見て、これは夢かと思うほど心が躍った。
彼女の顔を見れただけで幸福感を感じた。
しかしその後、彼女がどこぞのしつこい男に狙われているという事実を聞いて心がざわめき、さらにその男の対策として不死川に恋人のフリを頼み込んでいたと聞いた時には、不死川への嫉妬で冷静さを失ってしまった。

名前さんのこととなると、己の感情が短時間でこんなにも大きく揺れ動く。
恋とは恐ろしい。

この俺には分不相応で、嫉妬する資格すらないこともわかっているつもりだ。
けれどもこのどす黒い感情を止めることができない。

大人気なく、不死川に見せつけるように、彼女の肩を寄せ必要以上に近づき写真を撮ってしまった。
あの時の彼女の赤くなった顔を見て心が満たされた。

別に不死川が彼女を好いているというわけでもないのにこの様だ。
身の丈に合っていないと自覚しながら、幼稚にもあんな振る舞いをしてしまった。
俺は愚か者だ…。

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