第9章 飛沫
こんな状態なので、私は先に離脱させてもらうことにした。
1人で帰ろうとしたところ、カナエさんが
「1人じゃ心配だわ!冨岡くん、送っていってあげて!」
と全力で遠慮する私をフル無視して義勇くんと一緒に店を追い出された。
カナエさんってけっこう強い人なのかもしれない…。
「義勇くん、ごめんなさい、付き合わせてしまって…」
「もとより付き添うつもりだった…気にするな。」
うぅ、紳士かよ…
さっきからフラフラの私の背中に手を添えてくれてるし…
取引先のナンパ野郎に爪の垢煎じて飲ませてやりたいくらい紳士だけど、義勇くんのならむしろ私が欲しい。
「……そういえば、さっき、なんて言ったの?」
「…なんのことだ?」
「ほら、お店で私の背中さすってくれてた時、月がどうって言ってませんでした?」
あぁ、あれか…と義勇くんは思い出したように呟いた。
「…涙で…潤んでいた名前さんの瞳が、きらきらしていたから…」
「……」
「…それが水面月のようだと思ったのが、思わず口に出てしまった…それだけだ」
「へ、へー…」
ロマンチックな一面もあるのやめてほしい!!!
今すんごいきゅんっ…てしちゃったよぉおおお!!!
あぁ、だめだ、興奮して一気に酔いが回ってきた…
あとすんごい急に眠気が襲ってきて、目が重い…
「ぎ、義勇くんごめ…ちょっとやすませて…」
「!…わかった」
ちょうど近くに公園があったらしく、義勇くんは私の手をゆっくり引いてくれ、ベンチに座らせてくれた。
「大丈夫か?」
「うん……ちょっとやすめば…だい、じょう……」
義勇くんはしゃがみ込んで、ベンチに座る私を下から覗き込むように声をかけてくれた。
その返事をしてる最中で、私は眠りについてしまった。