第8章 せせらぎ
はっ!いかん、流されるとこだった。
「不死川さぁん…写真、どうしても撮ってもらえませんか…」
「……諦めるんだなァ」
「そんなご無体な!」
再びしがみつこうとしたら逃げられた。
速すぎん??
突風かよ。
「てかよー、冨岡に頼めばいいじゃん」
「はい?」
「冨岡。あいつなら喜んでやるぜ、絶対。飲み会の時頼めば?」
義勇くんに…彼氏を装って一緒に写真を撮ってもらう…???
「無理無理無理!無理です!そんなの無理!」
「なんでだよ」
だって…そんなの…
「スマホでツーショットなんて、めっちゃ至近距離になるじゃないですか?!義勇くんのご尊顔がそんな近くにくるなんて私、尊死する!」
「名前ちゃんはなに言ってんの?」
「俺なら平気ってのがなんかムカつくわァ」
推しに彼氏のフリを頼むなんて愚行!!!
神に人間のフリをしろっていうのと同じだよ!!!
「てかさ、名前ちゃん時間大丈夫なのか?」
「へ?……あ、やばい!」
必死になりすぎて時間忘れてた!!
「ほい、これ俺の番号。仕事終わったら電話ちょーだい」
「え、あ、了解です!!」
「オラ、さっさと行けやァ」
「はいー!さよならー!」
「じゃーなー」
さらりと天元さんの電話番号を教えてもらい、私は急いで職場へ向かう。
結局、不死川さんに写真撮ってもらえなかった。
最悪だ。
不死川さんならなんだかんだ撮ってくれると思ったのに!
もうこの際、天元さんでもいいか。
顔怖くないけど、怖いくらい整ってはいるから、相手も怯むでしょ…。
とりあえず今日は耐えて、飲み会の時に改めて天元さんに交渉しようと心に決めた。