第5章 水鏡
「あ、名前さんちょっとまって!」
彼女が数メートル歩いたところで、胡蝶が小走りで追いかける。
胡蝶に気づいた彼女が足を止めた。
追いついた胡蝶は彼女と少し話し、すぐに戻ってきた。
彼女はそのまま行ってしまった。
「何話してたんだ?」
「うふふ、内緒よ」
「はぁ?なんだよ、地味なことすんなよ派手に気になるじゃねぇか」
「......俺も気になるのだが」
「ダメです、言いません」
ピシャリと言い放たれてしまった。
普段穏やかな胡蝶だが、頑固な時はとても頑固で、これはその時なのでもう何を言っても教えてもらえないだろう...しかし気になる。
「それにしても面白い女だったなー、名前ちゃん」
「とっても可愛い人だったわ!」
「冨岡、派手に脈アリなんじゃねぇの?」
宇髄がまた腕を俺の肩に回してくる。
重い...
「悪い冗談はやめてくれ...」
変な期待をさせないでくれ。
ただでさえ昨日、自分が自惚れていたことがわかって落ち込んでいたのだから。
「冗談じゃなくてさぁ...胡蝶もそう思うだろ?」
「さぁ、どうかしらねぇ?」
ほら、胡蝶は微妙な反応だ。
彼女にその気はない。
誰にでもあんな風に優しいだけだ。
自惚れてはいけない。
俺のような男は、彼女に相応しくないのだから。
また気分が落ちこんできた...。
「ま、じゃあ目当ての女に会えたし俺は戻るわー」
「本当にそれだけのために来たのか」
「あたりめーよ、じゃな!」
立番一緒にやるんじゃなかったのか...
まだ生徒も全然来ていないのに...
「私は一緒にやるわ」
その後、そう言ってくれた胡蝶と立番を終え、いつも通り仕事をこなした。