第3章 水面
「あ、あった!」
「?」
絆創膏の箱をあけ、1つ取り出す。
推しの傷にばい菌なんぞ1匹も入れさせない!!!
ましてや顔の傷!!!
ちゃんと良い絆創膏買っておいてよかったと安堵した。
「一応はっときましょう!」
竹刀先生に見せると、少し目を見開いた。
「いいのか」
「もちろん!」
おや、これまでの感じだと「俺に絆創膏を貼る資格はない」とか言い出しそうなのに、今回は素直に好意に応じてくれた。
警戒心の強い動物が懐いてくれたみたいで思わず感動して泣きそうになったが、目の前の女がいきなり笑顔で涙を流し始めたらキモすぎると思うので涙は無理やり引っ込めた。
「...たのむ」
ん?
竹刀生徒は私の手から絆創膏を受け取らず、その代わりに私に少し近づき身をかがめた。
竹刀先生の顔が、またまた目の前に。
再びきた推しのドアップに
私は(あれ?今日握手会だったっけ?)とテンパった。
「...?」
ちらりとこちらの様子を伺う竹刀先生。
まって、これはもしかして、私に絆創膏を貼ってもらう気でいるということ...?!?!
「ぁっ...はります、ね...?」
「あぁ」
合ってた!!!合ってた!!!!
なに?!なんなの?!?!
殺しにきてる!!ときめきで私を殺しにきてる!!!!!
頭の中はそれはもう大変な様子ですが外側は平然を装い、(手は若干震えたが)絆創膏の保護紙を剥がす。
推しの綺麗な顔をガン見しつつ傷を狙って絆創膏を貼る。
貼る時に私の指先が推しの頬と髪に触れて、
推しの長すぎるまつ毛がぴくりと動いたのを見て私はもう本当にもう語彙という語彙を失った。
「は、はれました...!」
「...ありがとう」
そして初めて聞いたお礼の言葉と初めて見たほんの少しの微笑みに私の頭の中では推し活ビックバンが発生し新たな宇宙が生まれその後の記憶はほとんど残っておらず、気がつけば自宅のベットの上だった。