【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常
第2章 被験体 ※裏 シルバ×イルミ×教育係
その女は、ゾルディック家に「教育係」の名目で連れて来られた。
だが、本当は違う。
暗殺の為、人間という生き物を学ぶための、生きた教材だった。
女はゾルディック家で「被験体」と呼ばれていた。
「人間は嘘をつく」
シルバは淡々と言った。
「厄介なのは、嘘をついている本人にもその自覚がないことだ」
「恐怖で震え、怒りで叫び、悲しみで涙を流す。極限状態で口から出る言葉など、何の意味もない」
あたしはその声を、吊るされたまま聞いていた。
爪先がつくかつかないかの高さでぶら下げられ、手枷に足枷、そのうえ目隠し付き……いや、盛りすぎでしょ。
血生臭い地下の拷問部屋へ連れてこられ、この体勢のまま何時間放置されたことか。
さすがに限界だ。
鉄が食い込む腕が悲鳴を上げている。
(そろそろ誰か来てくれないかなぁ)
なんて思ったところで、ようやく重たい扉が軋んだ。
親子は会話を続ける。
「じゃあ、どうしたらいいの?」
イルミの声にシルバは答えた。
「体に直接聞けばいい」
そう言うとシルバはあたしの目隠しを外す。
「そのための教材だ」
大きな黒い瞳に、真っ直ぐに見つめられる。
「被験体の女だ。必要なことは、こいつから学べ」
少年イルミは素直に頷いた。
あたしがシルバに拉致されて被験体なんかやってるのは、その場しのぎで生きてきたツケだ。気づいたら、こんなところまで流れ着いてた。
少しばかり運が悪かったのもあるけど、それも込みで自分の人生だから仕方ない。
それにしてもまあ。
こんな子もいるんだなぁ。
この子、まだ十五くらいでしょ?
この歳で教わるのが人の殺し方ばっかりなんて、なかなかハードな人生送ってるじゃん。
なんか不憫だねぇ。
……なんて。
人の心配してる場合じゃないか。