第5章 独裁者
その女は、以前屋敷に来た後に、五条家から伊集院家に送ったメイドだった。
何を考えているか分からない椿の身辺調査の為に、悟がわざわざ潜入させていた。
悟は椿に会う前から、彼女から椿の近況を聞いた。
日常は想像していた通り、椿は仕事しかしていない。
悟と会わなかった日も仕事に没頭していた様だ。
彼女の話を聞いていた悟の雰囲気が変わったのは、夜の椿の話を聞いてからだ。
『イカれた令嬢』
そう呼ばれる椿の正体を初めて知った。
夜になると、響き渡る椿の叫び声。
そして、その部屋に入っていく一条昴の姿。
昴は椿の部屋に入ったら、そのまま朝まで出てこない。
それはこの屋敷の者なら皆知っている事実だった。
その報告を受けた時に、悟はこれ以上無いほどの怒りが込み上げた。
元々気に入らない犬だった。
その犬がどうやら飼い主の寝室に毎晩通っているのだ。