第4章 強かな婚約者
だから分かる。
この笑顔は外面で、内心は言う事を聞かない椿に苛々しているのだろう。
「なぁ、悟くんのとこだけやなくて、俺んとこにもええ案件回してや。」
直哉が椿に要求する事は、夢でも現実でも変わらない。
恩恵も優遇も五条家よりも禪院家を優先して欲しいと望んでいる。
椿は目を細めて直哉の顔を見た。
言われた通りに直哉だけに尽くした結果を。
椿は知っている。
使い物にならなくなったら、すぐに殺すくせに。
昨夜の夢も最悪だった。
直哉が生きている限り、椿が悪魔に苦しめられる。
そう考えた時に、急に気が付いたように、持っているペンの動きが止まった。
(何でこんな遠回りをしているのだろう。)
「?」
急に考え込んだ椿を、直哉は不思議そうに見ている。
『直哉を殺せばもうこの悪夢を見なくて済むのでは無いか。』
そう気が付いた時に、胸が大きく高鳴った。