第9章 よくない変化
悟は先に部屋の奥に進む椿の後ろで、彼女の細い頸を見ていた。
手を伸ばして、後ろから椿を抱き締める。
椿の肩に悟の額が押し付けられると、椿は悟の柔らかい髪の毛を撫でた。
「……どうしたの?」
ずっと抱き締めて、動かない悟に椿は聞いた。
「……犬っころを置いて教会に行ったのは、相引きのため?」
「は?」
思わず触れていた悟の髪の毛を掴むと、ゆっくりと悟が顔を上げた。
椿の顎を手で掴むと、少し強めに顔を後ろに向かせる。
「今までもアイツはあんなことしてきたのか?」
あんなこと…。
今日みたいにあからさまに触れられたのは初めてだった。
「…馴れ馴れしい人ではあったけど、あそこまであからさまだったのは初めてよ。」
そう言って少し突き出されている椿の唇に、悟は目線を落とした。
薄っすらと赤く色付いている唇に、自然と引き寄せられる。
あの時の禪院直哉も、同じように惹きつけられたのだろう。
その男が触れなかった唇に触れると、悟は椿の体を向き直させて、もう一度深くキスをした。