• テキストサイズ

緋色の誓い

第2章 始まりの合図


女将に用意してもらった縄を手に、一人一人廊下の端に連れて行き両手首と両足を縛っていく。

男たちの口に布を噛ませて猿轡をさせる。

「ん…んんっ!!?」

目を覚ました一人が、震えながら斗亜を見た。

斗亜は男の前にしゃがみ込んだ。

「だから言ったろう。この宿場に入るのはやめろ。次見つけたら許さねぇ」

賊の喉が引きつる。

こくこくと何度も頷いた。

斗亜は立ち上がる。

「あ、そうだ。騒いだら…許さねぇ…」

鋭い視線を向けて斗亜は部屋に戻った。

外は何事もなかったかのように、夜が続いている。

斗亜は小さく息を吐き、布団の中に潜った。

「やっぱり屋根あると楽だな…」

目を閉じると、すぐに睡魔が落ちてくる。

二階の廊下の隅に、恐怖のまま朝を待つ三人を残して。



翌朝。

障子越しに光が柔らかく差し込み、畳の目を白く浮かび上がらせる。

斗亜は目を覚ました。

布団を畳んで部屋の隅にまとめる。

その時、階段を上がってくる足音が聞こえた。

女将だ。

「朝餉だよ」

女将の足が、途中で止まった。

拘束された三人の賊を見たからだ。

三人の賊は並べられ、縛られ、猿轡を嚙まされて顔色を失っている。

怯えている。

“部屋の中にいるもの”に。

女将は何も言わない。

ただ一度だけ、三人を見回す。

音がしなかった理由。

血の匂いもしなかった理由。

この怯え方。

理解するのに時間はいらなかった。

女将は歩き出す。

斗亜の部屋の前で止まる。

「飯だよ」

ひと声かけて襖を開ける。

「その三人、煮るなり焼くなりしといてくれ」

まるで、洗濯物でも頼むような声色だった。

「朝から物騒だね~」

女将は小さく息を吐く。

斗亜は何も言わず、手を合わせて飯を頬張る。

斗亜の目の奥にあるものを確かめるように見る。

「人斬り…だったね」

確信だった。

斗亜は、飯を頬張る。

「だったな」

短い答え。

それだけで十分だった。

女将に恐れも軽蔑もない。

「宿代は、いらないよ」

女将の言葉に、斗亜が顔を上げる。

「用心棒代で足りてる」

「そうか…ありがてぇ」

白飯をかきこむ。

女将が部屋を出て行く。

/ 16ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp