【ヒロアカ】Until You Live【爆豪勝己】
第2章 【一巡目】
その間にも、担架に乗せられた透の身体はリカバリーガールの元へ向かって猛スピードで運ばれていく。心電図を繋げられて、「まだ息がある! 急げ!」と誰かが叫んだ声が、かろうじて爆豪の鼓膜を掠めた。
その瞬間、爆豪の動きがぴたりと止まった。
「……生きてんのか」
誰も答えられなかった。誰もがその凄惨な状況に言葉を失っていた。
爆豪が彼女の元へ駆け寄ろうとした、その刹那。
そんな爆豪の必死の祈りを嘲笑うかのように、廊下の先から「ビーーーー」という、冷徹な電子音が鳴り響いた。心停止の合図。
今度は、一ミリの迷いもなかった。
爆豪は躊躇なく、手にしたナイフを己の首へと深く突き立てる。
「ばっ……!!!?」
鮮血が激しく噴き出す。切島と上鳴が二人がかりで全力で押さえ込んでいたはずだった。しかし爆豪は、二人の拘束を、両腕の至近距離爆破の反動で無理やり引き剥破っていたのだ。
ナイフの鋭い刃が首の横のあたり、頸動脈を深く、的確に切り裂く。
赤黒い大量の血がTシャツを一瞬で真っ赤に染め上げ、床に大きな血の溜まりを作る。二人分の大量の失血が、周囲の空気に強烈な鉄錆の臭気が充満した。
上鳴は顔面蒼白になり、腰を抜かす。
「先生!! 誰か、先生呼べ!!! 爆豪が、爆豪が――!」
騒ぎを聞きつけた相澤が猛スピードで角を曲がって現れる。爆豪はその姿を最後に視界に捉え――そして、遠くで響く鐘の音と共に、世界は急速に暗転していった。