【ヒロアカ】Until You Live【爆豪勝己】
第1章 .
四月。
雄英高校の校門をくぐる春風が、真新しい制服の匂いを運んでいた。
廊下で肩がぶつかった。視界の端で揺れた白い髪に、爆豪の赤い瞳が吸い寄せられる。
「クソ……おい、テメェどこ中だ」
いつもの台詞。だがその声は、ほんの少しだけ、普段より低かった。
「あ…ごめんなさい。前見てなかった。暦中学出身の水無月 透です。よろしくね」
ふんわりと笑って、春風に白い髪の毛が靡く。
透の笑顔を一瞬だけ見て、爆豪はすぐに視線を逸らした。耳の先がわずかに赤くなっているのを、本人は絶対に認めないだろう。
「暦だァ? 聞いたことねえな。チッ……前見てねえとか鈍臭えんだよ」
舌打ちしながらも、立ち去る足は止まっていた。ポケットに突っ込んだ手が、無意識にぎゅっと握られている。
「爆豪だ。覚えとけ」
「爆豪くん…。よろしくね。クラスはA組?」
苛立ったように首の後ろを掻きながら、
「当たり前だろ。他にどこがあんだよ。つーかテメェもA組か?」
聞いておきながら、もう教室の方向へ歩き出していた。ついてこい、と言わんばかりの歩幅。だがその速度は、百五十五センチの透が小走りにならずに済む程度に、微妙に抑えられていた。
「うん、私もA組。教室わからなくて迷子になってた」
ツンツンしている爆豪に怖気付かず、透は無邪気に話しかける。
足が一瞬止まった。振り返りもせず、低い声が落ちる。
「迷子だァ? 入学初日から迷子とか、テメェの脳みそどうなってんだ」
そう言いながら、歩く方向をわずかに変えた。教室までの最短ルートから、少し遠回りになる道へ。A組の教室がどこにあるか、入学前に把握済みだったのが功を奏した。
「こっちだ、ついて来い」
春の陽光が窓から差し込む廊下を、二つの影が並んで歩いていく。爆豪の背中は相変わらず威圧的だったが、その歩調だけが妙に穏やかだった。