【重め溺愛共依存】ぼくに夢中になってよ。【えっちなのばかり】
第10章 きみは精神安定剤。/呪術_日車寛見
−「君の精神(こころ)はどうなるのさ、日車くん」−
有罪判決を告げられたときの依頼者が、怨むような目付きで俺を睨む姿も、職場の人間の言葉も、こびりついて離れない。心臓に灰が詰まったような息苦しさを抱えながら帰宅する。
時刻は深夜2時をまわっていた。
オートロックを開けてエレベーターに乗り、最上階へ。
カード式のロックを解除し、出来る限り静かにと思いつつも、乱暴に玄関を開ける。
そして、いつもなら揃える革靴を脱ぎ散らかしたままにしてしまうほど、俺は限界を迎えていた。
ともに暮らす彼女、はさすがにもう寝ているだろう。しかしリビングは俺の帰りを出迎えてくれているかのように灯りがつけられ、テーブルの上には彼女の手書きのメモが置かれていた。
ひろみさんへ
お仕事お疲れさまです。
冷蔵庫で冷やしているおかず
食べる元気があったら食べてね。
1時までがんばって起きてたけど
もうだめです…。
先に寝ることをゆるしてください。
ゆるりとした文字とちいさなイラストがちりばめられた、俺を気遣った文章。ゆるしてください、だなんて。彼女らしい健気な文章に、心臓に詰まった灰のようなものが流れていくような気がして、ほんのすこし身体が軽く感じる。
がんばって起きていたらしい彼女を起こさないよう、ネクタイを外しながら忍足で寝室に向かう。同棲をする際、「絶対2人で寝たい」と主張するのために購入したダブルベッドの左側で、あどけなく眠る彼女を見つけた。俺のスペースを空けながら眠るところも愛らしいなと、つい笑ってしまう。
眠っている彼女の額に、キスをする。
今の今まで抱えていた仕事のストレスが、ふわりと緩和される感覚がした。
「………。」
だめだ。
彼女を起こしてはならない。
俺がもっと癒やされたいために寝込みを襲うなんて、そんなこと。