【重め溺愛共依存】ぼくに夢中になってよ。【えっちなのばかり】
第8章 のろいのような愛。/呪術_羂索(加茂憲倫)
正体を現してから彼女は加茂憲倫ではなく私の名を呼んだ。
呪霊を当てがわれることもなくなったというのに、以前よりも増して私の傍を離れず、時折、額の縫い目の糸を解こうとすることさえあった。その度にその細い手首を掴んで両腕を拘束し、言い聞かせるように睨みつけるが、彼女はすこしも動じずに、いとおしそうに縫い目の奥の私を見つめる。
それが心地よく感じた理由は私自身まだよく分かっていなかった。
「けんじゃくさま、あなたのお姿をもういちど見たいです」
「毎回毎回見せるわけがないだろ」
「でしたらせめて、すこし屈んでくださいませんか…?」
懇願する彼女に数秒考え込むが、断る理由が見つからず、渋々と目線を合わせるように屈む。
「けんじゃくさま、」
「お前なにを、っ」
彼女は私の名を呼びながら額に触れて、あろうことか、縫い目に口付けた。
加茂憲倫を見つめる眼差しが、自分に向けばいいと感じていた。
呪霊に種付けされる姿を、おもしろく感じない自分がいた。
「けんじゃくさま」
愛おしげに私の名が呼ばれることも
大切なものを扱うかのように触れられるのも
ひだまりのような笑みを向けられるのも
千年近く生きてきて一度も経験がなかった。
「お慕いしております」
彼女の言葉に、行動に、存在に
私はこれまでの全てが報われたような気がした。
いつからか私は彼女に、私を、見て欲しくなったのだ。
「……、」
「はあい」
「私は、…加茂憲倫ではないぞ」
「あなたと一緒にいたいのです。だめですか?」
「…心変わりが早い奴だ」
「最初に教えていただいたお名前が、けんじゃく、でしたら、そのように呼んでいました」
「わたしはあなたの魂、そのものが愛おしいの」
生まれてはじめて向けられた愛とやらはあまりにも心地よく、感じたことのないぬくもりが私を包みこんだ。
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