第17章 お風呂編
「そのぐらいの金、なんでもない。俺が1回の任務でどれぐらい稼いでいるのか知ってるのか?」
「はぁ? いきなりマウント取ってくるわけこの獣。でもお前、節約は大事だと思わないか? 女連れっていうのはな、何かと金がかかるもんだ。……そこでだ! 俺が知り合いのよしみとして、お前らに月々7000フロンでお湯をわかしてやろう!」
あなたはその金額の差に、すぐに目を輝かせてしまった。
「えっ……? そんなにお安くなるんですか?」
「おうよ奥さん。絶対俺に頼んだほうがお得だね。実は俺、手からお湯出せるから。ほら見てみろ。特別に体験させてやる」
彼はそう言って手のひらを上に向け、あなたに向かって結構強い水流のお湯をかけた。
「きゃあっ。ほ、ほんとだ。温かいお湯が出てる……すごいよルドガー! 魔術師ってこんなこともできるのっ?」
「。簡単に信じるな、魔術師は詐欺師だ」
ルドガーがあなたをかばい、服の袖で濡れたとこを拭いてくれている。
しかし、セロの手から水魔法が発現し、お湯が作られたのは彼も確かに目視していた。
「ふん。まあ試しに1回やってみろ。それが上手くいけば、月々の契約を考えてやらなくもない。だが異常が発生したらすぐにおしまいだ。お前の命も危ぶまれるからな、覚悟しとけよ」
「はいはい。なんで風呂ひとつで命まで脅かされなきゃいけねんだよ。……まあいっか、貴重な副収入だぜ〜」
彼は両拳を握って喜び、見事営業に成功していた。
「本当にいいの? お金かかっちゃうよ、ルドガー」
「大丈夫だ。手近で済ませられるなら越したことはないしな。それにあいつは腐っても魔術師として生きてきたやつだ。そのぐらいできるだろう」
彼は目を光らせていたが、セロのことをなんだかんだ認めているようだった。
あなたは自分の手を見て、ぽつりとこんなことを思う。
もし自分も彼みたいに手からお湯が出せたらな。
二人の生活にも役立つし、ルドガーも素直に喜んでくれるかもしれない。
魔界に来てからすでに芽生えていた「自分も力になりたい」という想いが、むくむくとさらに大きくなっていくのを感じた。