第16章 獣化編
「! 夢じゃないぞ、戻ってきたんだ」
彼はまばゆい笑顔であなたに語りかけるが、あなたは辺りをきょろきょろ見回した。
「……どこッ? 獣のルドガーどこ行ったのっ?」
寝起きで現実が分からず、混乱している。
そんなあなたを見て、ルドガーは一瞬胸がしめつけられた。
しかし、この長い期間で、あなたの瞳には獣のルドガーへの愛が確かに宿っていたことを、自分が一番よく知っている。
だから彼はすぐに起き上がり、いつも寝ていた床の上に立った。
「大丈夫だぞ、俺はここにいる、少し待ってろよ!」
そう元気づけて、ルドガーは再び獣化して見せた。
びっくりしたあなたの前で、またすぐに人化する。
胸を張り雄々しく立っている褐色肌の男。
うねった短い黒髪に、獣のときより小さくなった黒い角。
あなたはようやく理解して、瞳が揺れ出した。
「戻って来たんだ、ルドガー…!」
「……ああ! そうだぞ、ただいま!」
ルドガーはベッドに膝を乗り上げ、あなたの身軽な体をすくい上げるように抱きしめる。
ぎゅうっと離すまいという強い想いを、伝えたくて仕方なかった。
「ごめんね、少しパニックになっちゃったの、ずっと獣のあなたといたから」
「ああ、わかるぞ。お前が俺のことを、毎日大事にしてくれたからな」
間近で見つめた彼は、切なく愛おしい気持ちにあふれ、顔を近づける。
「んう、ぅ」
唇を触れ合わせ、何度か顔を傾けたあと、またあなたをじっと見た。
「だからこそ、俺は早くこの姿でお前とこうしたかった。ずっとお前のことばかり考えてたんだ……」
大事なことを伝えると、またルドガーは分厚い唇で、あなたの唇を塞ぐ。
赤らんだあなたの顔は、されるがまま恍惚として、広い両肩へぴたりと手を添えていた。
「私も嬉しいよぉ……キスしたかったの。いっぱいして……」
素直に求めると、ルドガーは興奮した様子で、あなたの体に回す腕に力をこめる。
「んっ、ん、む、好き、ルドガー」
「俺もだ、……っ」
唇を合わせられるということがこれほどまでに素晴らしく、奇跡的なことなのだと。
二人の頭の中は、共通の思いで占められていた。