第16章 獣化編
『お前、この私に対し、とんでもなく失礼なことを言える女だな』
「も、申し訳ございません。つい気が緩んでしまいまして」
『構わん。褒めているのだ。……ふふふ。獣か。まあある意味、間違ってはいないか……』
気になることを呟かれたが、怖いのでもう突っ込むのはやめることにした。
なんだかゼイランのような気高さがある人だ。会えば教えてくれると言われたが、そのとき自分はどうなってしまうのか、想像がつかなかった。
『そういえばお前たちの保護者、いるだろう。ゼイランだ。あの男はもうすぐ、私に近づくかもしれん』
「……えっ? そうなんですか? どうやって?」
『ふん……たどり着けるものなら、たどり着いてみればいいさ。……ではな、。長話をしすぎた』
そう言って急に守護者はまた消える気配をかもしだした。
あなたは慌てて引き止める。
「あっ、これだけ! 守護者さま、セロさんとナザルさん、あの紫髪の魔術師の方にも伝えましたけど、うちにいますからね!」
『ああ、あいつらか。どうでもいい』
「えぇっそんな!」
『今のうちに羽を伸ばしておくがいい。そう言っておけ』
彼女はこれまでの和やかな雰囲気を一変させ、まるで厳しい飼い主のような声音で告げた。
それきり、会話は途切れてしまった。
あなたはひとり、リビングのカーペットに座ったまま、放心する。
今日はすごく長く話が出来た。
嬉しくもあるが、色々と彼女は気になることも言っていた。
ためになるアドバイスもだけれど、彼女自身の考えや環境も、少しずつ紐解かれるようだ。
「うん。私もいつか守護者さまに会ったときに、もう少し今より成長できるように頑張ろうっと」
ルドガーと向き合うこと。
互いを支え合いながら、二人で仲良く暮らしていくこと。
こうしてたくさんの助けてくれる人たちに、いつか恩返しができるように、生きていくこと。
今回の会話のあとは、いつもよりももっと、朗らかな気分に満たされていた。