第16章 獣化編
「守護者さま、素敵なハンカチありがとうございます! ほら、肌身離さず持ってるんですよ! 嬉しかったぁ~あなたって、ほんとに実在したんですね!」
ポケットから白い上質なハンカチを取り出して見せびらかす。
彼女の機嫌よさそうな笑い声が響いた。
『お前が喜んでくれてよかった。なるべく負担にならないようにしたつもりだ』
「なるわけないですって! ……あれ、でも、どういう意味ですか? そういえばあの場所って、貴族とかしか入れないところですよね。あの綺麗な魔術師さんも……守護者さまって、やっぱり偉い方なんでしょうか?」
あなたが何個も質問すると、彼女は黙った。
やっぱり重要なことは教えてくれないか……そう思った矢先、彼女はこんなことを言った。
『会ったときに教えてやる。いいか……お前とルドガーの結婚式に出るのが、私の夢なのだ……』
突然のしんみりした台詞に、あなたは鼓動が跳ね上がった。
「……えっ? いやそれは嬉しいですけど、急にどうしたんです。なんか遺言みたいに聞こえますよ、……守護者さま、死にませんよね!? やめてくださいよ!」
『……あのな。お前は考えが飛躍しすぎだ。私は願っても死ねない体なのだよ』
そっちの爆弾発言のほうが驚いてしまい、あなたは言葉に詰まった。
「ど、どうしてそんなこと言うんですか。……守護者さま、大丈夫ですか? 寂しいなら飛んでいきますからね!」
なんだか今日は彼女の言葉が哀愁に満ちた感じだった。
いつもの圧の強い威厳がなりを潜めている。
『ふん、寂しくなどない。孤独は最上の贅沢だ。私はそれを愛している。……でも、お前に会うのは楽しみにしているぞ。それは本当だ』
彼女の美学と一緒に、あなたへの気持ちも教えてもらい、胸がじんわりと熱くなっていった。
そう言ってもらうことが、自分にとって支えになっていることは確かなのだ。
そのぐらい、守護者はもういつの間にか、あなたと切り離すことのできない存在となっていた。