第16章 獣化編
夜になり、またひと悶着が起こる。
彼の獣毛は一日中抜けたり生えたりしていて、忙しそうだ。
あなたが夜の日課のブラッシングをしていると、もう彼は観念して気持ちよさそうに寝そべっていた。
「ねえねえ、これでクッション作るのどう? セヴァさん、知ってか知らずか裁縫道具まで入れといてくれたんだよ」
「……なぜそんな余計なことを。いいか、。俺は水浴びもしてるしこの毛は清潔だ。だがな、お前は獣の俺に慣れすぎている」
なぜか文句のように言われ、あなたは首を傾げた。
どうして慣れたらダメなのだろうか。
「いいことでしょう。獣のルドガーを好きになっちゃだめなの?」
「それはいい。嬉しいぞ。けどな……」
彼はこちらを振り向いて、少し拗ねたような顔でこういった。
「俺はお前のオスなんだぞ。人化したら、こんな姿よりお前をもっともっと夢中にしてみせる。それだけは忘れるなよ」
そう宣言されて、ドキっとした。
あなたは目をきょろきょろと動かし、照れた頬が染まっていくのが分かった。
「忘れるわけないよ、人化したあなたのこと。あんなに恰好よくて、頼もしくて、力強くて……」
なぜか本人の前なのに、語っていると熱くなった。
「……俺が恋しいか?」
獣化した彼が鼻先を近づけ、まるで「恋しいと言え」というふうに迫ってくる。
「うん……恋しい。ぎゅってしてほしい」
あなたは素直に吐露した。
そういう話題はよくないと思っていた。
今のルドガーには、このあふれ出る本物の愛を伝えたいし、そうすべきだと思っていたのだ。
しかしルドガーはいつも自分の気持ちにまっすぐで、彼の願いも常にあなたにしか向いていない。
「わかった。終わったら絶対にお前をたくさん抱きしめてやる。すぐだぞ」
彼は誇らしく伝えてくれた。
この姿で愛を示されて、あなたは余計に気恥ずかしく、真っ赤に染まってしまった。