第16章 獣化編
魚はミニ冷蔵ボックスに入れ、夕食にすることにした。
帰り道、ここで休もうと言われ、大木の下に二人で座りこむ。
夜は一緒には寝られないけれど、ルドガーは横たわる自分の胸元で、あなたの頭を抱えてくれた。
長くボリュームのある尻尾が丸まっていて、彼もくつろいでいるのが分かる。
「……ねえねえ、いつもと違う過ごし方だと思うけど、いいの? 大丈夫だった?」
「俺は嬉しい。この顔じゃ分からないだろうけどな。ものすごく喜んでるんだ」
「ふふふ。よかった。わかるよ、ルドガーの獣の表情」
あなたは振り向いて、ちょうど目の前にあった狼のような凛々しい顔の口元に、そっと唇を触れさせた。
この彼にキスするのは二回目だ。
彼はわずかに瞬きをし、三角の獣耳を細かく揺らした。
あのときのように、気恥ずかしそうな様子であなたの頬をぺろっと舐める。
「お前は変わっている、。この俺にも、優しくて愛情深い。本当に怖くないんだな」
「あたりまえでしょう」
「どうしてだ?」
真面目な声音で尋ねられて、答えに困った。愛おしい人だから。
それ以外に何があるのだろう。
微笑み口を開こうとすると、ルドガーの腰のあたりに鳥が止まった。
あなたは彼の一瞬煩わしそうにした表情にも気が付く。
黄色い小さな鳥だ。二匹やってきたため、彼と目で合図をし、まじまじと見つめた。大声を出したら飛んでってしまいそうだからだ。
するとなんと、あなたの頭にも三匹目が止まった。
「おい。お前にもなついてるぞ。……不思議だな」
「……本当だ。ねえ、写真機借りてくればよかったね」
小声で言うと、冷静なルドガーに「誰が撮るんだ」と突っ込まれてしまった。
思わず吹き出すと、鳥たちは全員いなくなった。
彼らが羽ばたいていってしまうのを見て、なんてのどかで、幸せな時間だろうと感じた。
あなたは獣のルドガーとの日々も、大切に噛み締めたいと思っていた。