第16章 獣化編
本当に二時間もかからないうちに、セヴァが所有する森へと到着した。
途中山道もあったが、格式高い馬車の中は驚くほど快適だった。
ただ一人での移動は初めてで、少しだけ心細さを覚えたけれど。
「わあ~とっても綺麗なところですね! ほんとにここセヴァさん一族の持ち物なんですか?」
「ええ、そうですよ。当主から食料や必需品などの贈り物もございますので、どうぞお二人でごゆっくり過ごされてくださいね。それと、何かありましたらこの通話魔石でご連絡ください」
制服を着た使用人の虎族の男性に、丁寧にもてなされる。
あなたはお礼が止まらなかったが、まるでホテルにいる客人のような、破格の扱いを受けてしまった。
「ひいい、すっごい美味しそうな食料品とフルーツ……パンもあるよ。デザートも!……セヴァさん、優しいなぁ。皆さんも」
ここまでしてもらっていいのだろうかと恐縮してしまったが、氷魔法の魔石を封じ込めた冷蔵庫に詰めて、ほっと一息ついた。
なんといっても、驚くのはこの吹き抜けの広いログハウスだ。
丸太が積まれた2階建てで、木彫りの家具には毛皮が敷かれている。
大きな暖炉もあるし、温かみがありながら王者の風格のような豪華さも兼ね備えていた。
いくつもの部屋を見て回ったあなたは、リビングの大きなガラス窓の前で佇んだ。
ここがもっとも壮観だ。まるで森の中に立っているかのように、窓の外には鬱蒼とした木々が広がり、静寂に包まれる。
「ルドガー、ここすごいよ。どこ行っちゃったの…」
ぽつりと圧倒されていると、前から獣の影が現れた。一瞬ビクっとなるが、それは黒光りする青い毛をまとったルドガーだった。
「あっ、おかえり!」
あなたは中から手を振って、急いで玄関へ行こうとする。
だがそのとき、ルドガーに首を振られた。
よく見ると、彼は口に何かを咥えている。
あなたが彼の動きについていくと、近くに裏口があるらしかった。
獣の顔で少し押せば、自動で入れる木扉が備え付けられているのだ。