第16章 獣化編
朝起きたら、丸い大きな金の瞳にじっと見られていた。
寝ぼけ眼のあなたは「わああっびっくりした!」と藁の上で飛び起きる。
厩舎にはまだ動物たちがいて、懐かしい匂いが漂う。
寄り添うように腰を下ろしている獣のルドガーに安心した。
「おはよう、ルドガー」
「おはよう、。よく眠っていたな、こんなところで。すごいぞ」
朝から冷静に突っ込まれ、あなたは苦笑した。
確かにぐっすり眠ってしまったのは、隣に心地よい毛並みがあったからだ。
ルドガーが大きなあくびをするのを見て、猫のように可愛いと思った。
「良い知らせだぞ。さっきマルグが来て、セヴァに別荘を貸してもらえることになったと教えてくれた」
「本当っ? わあすごいよ、本当にありがたいね!」
「ああ。場所はログハウスつきの森の私有地だから、安全面もばっちりだ。一族の休暇用の家らしいが、この時期は空いているから自由に過ごしてくれと言われた」
急なお願いに親切にしてもらい、ルドガーの師のような存在でもあり仲間でもある隊長セヴァに、深く感謝をした。
彼はゼイラン軍の獣族部隊長で、日々忙しい人物だ。
前に何度か会ったことがあり、物腰が上品でとっても優しい虎獣人の男性だった。
聞くとあなたのために屋敷から馬車を手配してくれたようで、慌てて荷物を取りに行くことになった。
その私有地は厳格な結界が張ってあり、他者の転移魔法は使えないらしいのだ。
支度を済ませて騎士団の門の前で待っていると、大きく立派な馬車がやって来た。
運転している者も案内役の人も、セヴァの使用人の虎族で、茶色や黄色交じりの毛が美しい。
「ではどうぞ、様。ルドガー様はご自身で向かわれますか?」
「そうする。を頼む」
「かしこまりました」
獣姿の彼はそう言い、あなたと一時の別れを交わした。
「彼らは強いし安全だから大丈夫だぞ、数時間で着くはずだ」
「うん。でもルドガーはどうするの? 走っていくの?」
「ああ。お前より早く着くだろう。ひとっ飛びだ」
彼は言葉尻を弾ませ、ふわふわの尻尾を揺らした。
森へ行くから、野生の気持ちが高まっているのかもしれない。
あなたもそんな彼を見てドキドキしながら、新たな場所へと送ってもらった。