第14章 疑問編
お手洗いから出て廊下を歩き、その出口にルドガーの後ろ姿があった。
あなたは彼の腕の後ろから顔をひょこっと出し、彼を驚かせる。
「、もう済んだのか? 大丈夫か」
「うん! ……ねえねえ、あのね。ものすごいことがあったよ!」
顔は上気して興奮を隠せず、表情も満面の笑みだ。
不思議そうにするルドガーに対し、あのハンカチを見せた。
「これ、今知らない女の人にもらったの! きっと守護者さまの関係者だよ、私の名前も知ってたんだよ!」
「…ちょ、ちょっとまて、どういうことだ?」
混乱する彼にすべてを話した。
するとだんだんと理解をしてきたようだった。
「黒い服の女……? お前以外に、誰も出てこなかったぞ」
ルドガーの動揺する瞳に見下され、あなたも驚くが、もしかして彼女は魔術師なのではないかと思った。
微笑みから女性の優しさは感じたけれど、黒衣に身を包んでいたし、たたずまいも気配も、なにかただ者ではない気がしたのだ。
「魔術師か……。だが、ここはそう簡単に入れる場所じゃない。今は魔界一警護が厳しいと言っても過言ではない所だぞ」
疑いをぬぐえない彼にあなたも神妙に同意する。
「でも、見てこのハンカチ。ちゃんと存在してるよね?」
「ああ。……触ってもいいか?」
「もちろん!」
彼に渡すと、獣らしく鼻を近づけて探ろうとしている。
あの女性からはいい香りがしたが、なんとこのハンカチは無臭だと言われた。
気配や痕跡を残さない所はまるでミザロのようだ。
「でも綺麗だよね……上質な布で肌ざわりもいいし。ふふ。守護者さまからの贈り物なのかな。嬉しいなぁ……」
「……ああ、そうだよな……」
ルドガーは状況に困惑しつつも、喜ぶあなたのことを慎重に見守っている様子だった。
だがハンカチの飾りについて、彼は気に留める。
「なあこれって、紋章のようだ」
「えっ、そうなの? この刺繍?」
ハンカチの模様だと思っていたが、角の隅には曲線と茨のようなデザインがなされている。
その上ルドガーが折りたたまれたハンカチを裏返すと、もうひとつの記号も発見した。