第14章 疑問編
彼女は目が合うと、薄く瞳を笑ませた。
あなたもにこっと微笑んだところ、彼女はハンカチを差し出してきた。
「えっ。あ、大丈夫ですよ! ありがとうございます」
「いえいえ、どうぞ」
「いえいえいえ、そんな、綺麗なハンカチもったいないですし!」
手を振って遠慮すると、彼女は一歩こちらへ近づき、柔らかい表情のままこう言った。
「どうぞ。さん」
名前を呼ばれて、あなたは目を見開き時間が止まる。
黒い服の彼女はあなたの手をそっと取り、ハンカチを持たせた。
「あの、どうして名前……」
「守護者様からです」
妖艶な声音でそう告げられて、心臓がどくっと鳴った。
瞳が揺れ、まるで魔法がかかったようにまっすぐ見つめる。
「本当ですか? あなたはいったい……守護者さまも近くにいるんですかっ?」
尋ねても彼女は答えずにこりとしたままだ。
あなたは状況に混乱し焦っていたが、伝えなければいけないことを思い出した。
「あのっ、セロさんとナザルさん、騎士団にいます! 勝手なことをしてすみません!」
彼女は穏やかな表情を変えず「大丈夫ですよ」とだけ答えた。
ほっとするものの、彼女は明らかに状況を知る、守護者の関係者なのだと悟った。
まだ会話をしたかったのだが、徐々に距離が離れていき、去ろうとしているのだと思った。
「待って、守護者さまは……!」
「もうすぐです」
それだけ言って、その人は笑みを浮かべて軽くお辞儀をし、化粧ルームから出て行ってしまった。
あなたはその後もひとりその場に佇む。
渡された白く手触りのいいハンカチを見下ろし、なんともいえない温かい気持ちに包まれた。
手元もじわりと温もりを感じる。
守護者に会ったことはないのに、本当に実在したのだという感動が漂っていた。