第14章 疑問編
ルドガーも人の形になれるけれど、普通に食事もするし睡眠も必要だ。
だがナザルは、さっき聞いた話だが、別に寝なくても生きられるらしい。
「あいつは前に、自分を幻獣だと言っていた。お前も見ただろう、黒い気体になって、壁をすり抜けたり、小動物に変身もできる」
確かに、すごく異質な存在だ。
それに彼は姿にかかわらず、魔法もある程度使えるらしい。
セロの魔力で動いていると言っていたから、魔術が関わっているのだろうか。
「でも外見が少し似ているのは、もしかしてルドガーと同じ種族、とか…?」
ルドガーの獣の姿を見たことはあるが、詳しくは聞いたことがなかった。
彼の過去も含め、安易に触れていい話題か分からなかったのだ。
「俺の種族は、戦闘を生業とする古代種というだけで、詳しくは不明なんだ。ゼイラン様に引き取られて間もない頃、学者に調べさせたらしいが、魔界でも希少種だと言われた」
初めて知る話にあなたは驚いた。
ルドガーの様子をじっと伺ったけれど、深く思い悩む様子はなく、ただ事実として受け止めているようだ。
けれど自分の生まれが定まらない気持ちは、少なからずあなたにも理解できる。
「もし仲間とかがいて、何か分かればいいんだけどね……ナザルさんに聞いても、教えてくれないかな」
「きっと答えないだろうな。セロも同じだ、語りたがらなかっただろう?」
あなたは思い出しながら頷いた。
二人は少しずつ素を見せてくれているけれど、おそらく根幹の部分は明かしていないのだ。
まるで何か隠してるかのように。
けれどひとつだけ確かなのは、やはりルドガーは、ナザルの実態を知りたがっているということだった。
「あいつの角も、煙になる力も、あの言葉も……偶然とは思えない」
思い返すように呟いた彼の横顔は、どこか悩ましげだった。
「なあ、俺はゼイラン様に会いに行こうと思う。お前も来てくれるか?」
「……えっ? うん! 一緒に行こうよ! 彼が何か知ってるかな?」
「いや……分からないが。他にも確かめたいことがあるんだ」
ルドガーは決意をこめた眼差しで、あなたの手をしっかりと握っていた。