第12章 赤兎編
「助けてえ、セロさんっ、この獣取ってええ!」
あなたがじたばたしていると、椅子をくるりと向けて、セロが何やら口元を動かした。
すると背後の男は、妙な反応をし始める。
「……ぐ、あ、な、なんだっ? 喉が、チクチク…しやがる! やめろセロ、てめえっ」
「なーんだ。俺の力じゃちくちく程度か。まあいいか、役に立たないこともねえな」
振り返ると、赤髪のナザルは首にまだはめられている黒い首輪を手でつかみ、微妙な不快感にもだえている。
これはミザロが彼に取り付けたもので、効果はまだ有効らしい。
「セロさんも使えるんですか? すごいじゃないですか」
「おう、いいだろ? さっすがミザロ先輩だよなあ、拘束呪文教えてくれたんだ。そうだ、お前にも共有してやろうか。」
「いいんですかっ? やったあ」
魔術師同士、ほがらかな表情でやり取りをしていると、はあはあと息をつくナザルが睨みつけた。
「てめえら……俺をおもちゃにすんじゃねえッ……これだからあくどい魔術師は……ッ」
自分のせいだろうとあなたとセロはじと目を投げる。だがナザルは不屈の表情で笑った。
「まあいいぜえ……、あんたにやられるなら悪くはねえ。気持ちいいぐらいの刺激だろうしな?」
まったく反省していない獣にあなたは肩がずり落ちそうになったが、もうそろそろ帰ろうと思った。
彼らに付き合ってると、自分のペースを戻すのが大変なのだ。
けれどマイペースなセロの言動は止まらない。
「あーナザル。粉末が切れちまった。おいお前、ちょっと買い物行ってきてくれ。いつもの素材屋な」
「……ああ? またかよ、面倒くせえな…」
密かな見守り役として、今の二人の会話だけは聞き捨てならなかった。
「ちょっと、買い物ってなんですか? そんなこと出来ませんよ。外出は禁止ですからね」
「平気だよ。こいつは自由に出入りできるから。ほら見せてやるからついて来い」
セロは立ち上がり、いったん休息の姿勢で伸びをした。
今度は何をするつもりなのか。
あなたは状況を確かめようと、寮の部屋から出る二人組についていった。