第12章 赤兎編
「セロさん! 待ってたんですよ!」
「あー……悪い悪い。……いや、ほんと悪い……」
珍しくしおらしく現れ、彼は言葉少なに皆の席へ入って来た。
自ら赤髪の男の隣に座ったとたん、相手を鬼の形相のように睨みつけている。
「あなた、我々を騙しましたね。あんな兎をここに潜り込ませて、何が目的だったんですか」
「いや、あんたが勝手に取り上げたんでしょう、俺はこうやって問題にならないように手元に置こうとしたのに!」
セロは身を乗り出して潔白を主張する。
あなたはやや同情気味にセロを見やる。
「彼、問題児なんですか? なんとなくわかりますけど……私にもさっきからずっとセクハラしてくるんですよ」
「えっ。やっぱり? ……バカ野郎てめえっ、この女だけはやめろ! 隣の巨体が見えねえのか、あいつはマジでヤバいんだぞッ」
セロが仲間の赤髪の胸倉を掴もうとするが、非力でちゃんと出来ていない。
男はだるそうにされるがままになり、ため息をはいた。
「うっせえな、セロ。何がやべえんだよ、ただのお堅い軍人じゃねえか。…あっ、俺のほうがあっちは硬いぞ? くくっ」
「だからセクハラやめろって言ってんだろ! ここでは問題起こすな! 俺らの進退かかってんだぞっ」
獣の言動に女性のあなたはすっかり引いている。
しかし少しだけ、彼らの関係性が垣間見えた気がした。
「わりいな、……こいつは馬鹿でスケベで戦闘狂の獣なんだ……俺の手にも余ってんだよ……」
「セロさん……苦労してきたんですね」
「……そうだよ、分かってくれるかっ? お前なら俺らの理解者になってくれると思ってたんだ!」
彼はなぜか一瞬ルドガーをちら見し、あなたに救いの手を求める。
同じ人間として、本来獣である彼らと接するのは、確かに簡単なことではないのかもしれない。
あなたには最初から、二人に寄り添う気持ちはあった。