第12章 赤兎編
「来るな、」
「うん……」
ルドガーの背に隠れ、赤髪の男を見下ろす。
近くで見ると、余計にでかく、ルドガーと大差ない体格だ。
彼はゆっくり顔を上げて、あなたに茶色の瞳を細め、舌なめずりした。
「ひっ。……あなたの名前は、なんですか…?」
「……俺か? 耳打ちしてやるから、こっちにこいよ。くくく…」
「きゃぁっ」
明らかにセクハラに満ちた獣を、おそるおそる観察した。
日に焼けた肌は筋骨隆々で、触れずとも熱そうな気がする。
それからルドガーのことを見上げた。彼は怒りが張り付いたような仏頂面をしていたが、改めてこう思った。
彼は品があって、紳士的な獣なんだと。
人化した他の獣は初めて会ったが、セロの仲間なのだとしたら、この赤髪もいずれ受け入れなければならない。
「ルドガー、なるべく喧嘩しないでね」
袖を優しく握ると、彼は最大限に拗ねた顔つきで振り向く。
「無理だ。以前、お前に話しただろう。番に手を出す奴がいれば、俺はそいつを殺ると」
「…………。そうだけど、さすがに殺っちゃだめだよ。ええと……」
同じ獣なんだし、とか可哀そうだから、とかセロさんの…とかいろいろ考えたが、どれもふさわしくない気がした。
そう思うぐらい赤髪の男を見ると、不敵にこちらを見つめていたのだ。
「師匠、この人どうします? セロさん呼びますか」
「そうですね……共犯者は別々に尋問するのが鉄則ですが……彼がいたほうが話がはかどるかもしれません。この方、私の前でもなかなかガードが堅かったので。……さん、あなたの言うことは聞きそうですけどね」
冷ややかな目つきで告げられて、汗が流れる。
ルドガーの怒りは、すぐにでも再燃しそうだった。