第12章 赤兎編
魔術師塔の上層階にあるミザロの部屋は、あいかわらずダークで混沌としている。
黒い家具のまわりに赤と青の炎がゆらめく中、奥の書斎には黒ローブの後ろ姿があった。
振り返った彼のそばの机に、あなたは鉄の檻を発見した。
そこには赤褐色のふわふわした兎が入っている。
「あれ、師匠。まさかそんなところに入れてるんですか? え、これ普通?」
そこまで大きくもない鉄格子に入り、兎は黒い首輪までつけられている。
しかも心なしか、怯えて縮こまっている様子だ。
「普通だろ。しつけの範囲だな」
「ほんとうっ!?」
堂々と発するルドガーは、腕組みをして兎を怪訝そうに見つめている。
「これが私の飼い方ですから。ルドガー、あなたこの兎、どう思います? 何か感じますか」
「……ああ。この兎は、見た目通りの物体ではない。邪で軽薄で薄汚い野郎だ」
さすがにそこまで言うことないだろうとあなたは閉口する。
それともなにか、獣同士で感じることがあるのだろうか?
ミザロとルドガーの真剣みから、簡単に口出しするのは憚られた。
だが雲行きが怪しくなってきたので、さりげなく手を伸ばしてみる。
「あの、普通にただの兎じゃないんですかね。なんか怯えて見えるし……ほら毛玉ちゃん、おいで~」
指で誘い出すと、兎は短い耳をぴんと立てて寄ってきた。
だが口を開けて舐められようとしたとき、その赤い舌がルドガーのように2つに割れていることに気づく。
「えっ? ……この前、こんなだった?」
よく見ると、眼差しもどこか暗く沈んだように濃い茶色だ。
この暗く重厚な部屋にいたから、この子も染まってしまったのだろうか。
そう考えた時のことだった。
「へへへ……なあ、あんたほんと可愛いな。ヤリてえ……」
そんな異常な言葉が耳に入った。