第12章 赤兎編
あれから捕虜のセロは騎士団の寮へ移された。
あなた達と同じ建物の一階だ。
そこは騎士団幹部らが住んでいるため、万一に備える効果もあった。
彼は待遇アップにたいそう喜んでいたが、仲間のことを尋ねると口をつぐんだ。
「そのうち来るだろ。俺は知らねえ」などと焦りを隠し、線を引くように。
「本当にあいつ、俺達と同じ寮に住むのか。何も起こらないといいけどな」
「たぶん大丈夫でしょう。彼もここから出たくないみたいだし」
騎士団領内を歩きながら、ルドガーとあなたは手を繋いでいる。
今は夜で、こんな時間に散歩というわけではないのだが。
ミザロに呼び出されたため、魔術師塔に向かっているのだ。
ルドガーはセロ達を騎士団が引き取ることに大賛成はしなかったものの、守護者の接触を待つ形に落ち着いたことには、異を唱えなかった。
「それで、あの兎をミザロが見ているのか? ふん、獣としては同情してやる。俺といるよりも居心地が悪いだろうからな」
「もうまたそんなこと言って。優しくしてあげてよ。ルドガーの100分の1ぐらいのサイズなんだから」
あなたが彼の下からやんわり諭すと、なぜかルドガーは満足して楽しげに笑う。
手を取って口でちゅっとやり、あなたを抱き上げて移動しようとした。
「ちょっ、ちょっと、酔ってるの? 誰かいたらどうするのよっ」
「俺は酔わないし、酒は獣の嗅覚を鈍らせる毒だぞ。それに周囲には誰の気配もない。ならいいよな」
きちんと答えて勝手に結論づけてしまう。
あなたは彼の首に手をまわし、しょうがなく身を預けて抱きつく。
あの小動物に会うからか、どことなくルドガーの闘争心がまたくすぶり出したのを感じていた。