第12章 赤兎編
「なんだか問題になってるようですね、この兎。ふふふ……では私がしばらく面倒みてあげますよ。貸しなさい」
「「……えっ?」」
あなた達はゆっくり彼に振り向く。
もう髪はほとんど黒く戻り、深海のような青を湛えた瞳の、暗さと神秘を併せ持つ独特の黒魔術師ミザロ。
だが彼に動物を愛する心など、正直欠片もないように感じた。
「それは先輩、大丈夫ですから。勘弁してください」
「なぜですか? 私に渡さないのなら、あなた方の入団を取り消しますよ」
非情に宣告され、セロは言葉に詰まり青ざめる。
二人は互いをこの空間から押し出すようにじっと見つめ合っていた。
するとミザロの手の中で、赤兎が暴れ出した。
彼の手から飛び降り、床の上でダン!ダン!と足を踏み鳴らして狂ったように回りだす。
「ほら! こいつも嫌だって! ここがいいんだってさ!」
セロが大喜びするが、兎はそのままあなたの膝の上に飛び込んできた。
「きゅうっ、きゅうっ」
「わあっ。どうしたの、こらこら」
一人で激しく動きまわる兎の背を撫でてなだめるが、あなたは残念そうに微笑む。
「ごめんね、うちも無理なの。ルドガーが大事だからね」
そこははっきり言うと、ふわふわの丸い毛玉はあなたの胸に再度もぐりこみ、頬をぐりぐりとこすりつけてきた。
「はあ~やっぱり可愛い。なんでこんなに可愛いんだろう、ごめんねえ。また会えるから」
しばし二人の世界に浸り、あなたはミザロにそっと手渡す。
「おい、マジでやめろ! それだけはよくないって……!」
「もう大人気だね~毛玉ちゃん。ひとまず師匠に見てもらいましょうよ、セロさん」
あなたが彼を優しく諭すと、彼は魂が抜けたように呆然としていた。
ミザロは表情を変えず、自身の手の上で震える赤兎を見下ろしていた。