第12章 赤兎編
あなたが微笑ましく思いそれを拾いあげようとすると、ミザロが先に手に取る。
まるで慣れたように、首根を掴んで持ち上げ、裏返して見ていた。
「あの師匠、そんな持ち方したら可哀想ですよ」
「可哀想? 獣にそんな感情必要ありませんよ。それにこの兎、当たり前のようにこの部屋にいますけど、一体どういう状況で持ち込んだんですか」
気づかれてしまい、あなたは散歩のときに拾ったことを説明した。
ミザロの視線は訝しんでいて、まったく嬉しくなさそうである。
「それ、俺のだよ。可愛がってるんだから、返してくれよ」
「……ほう。名前は? つけたんでしょう?」
「な……名前? そんなんねえよ。毛玉だよ、毛玉」
彼はまるで興味がわかないように、無表情で述べた。
動物好きなあなたは若干困惑する。
「セロさん、もうちょっといい名前つけてあげてくださいよ。それにターシャさんからもらった人参、ちゃんとあげてますか? あそこに山積みになってますけど」
定期的に訪れている医務室で偶然騎士のターシャと会い、彼からなんと野菜をおすそ分けしてもらったのだ。
実家が農家で、いつも大量に送られてくるらしい。
「あーあいつか、あの術耐性がすげえ弱いやつ。優しいよな、こんなことした俺らに対して。お礼言っといてくれよ、うめえなこの人参」
「それは伝えますけど、この子にもあげてくださいよ」
「へーへー分かったよ。あのなあ、お前らがそもそも飼えないのを俺が引き取ってやってんだぞ? そういう恩人に対して飼育環境文句つける人間なの? お前」
「それは感謝してますってば!」
彼のオープンな人柄のおかげですっかり打ち解けている二人だが、喧噪が嫌いな年長者のミザロが制止した。