第12章 赤兎編
「いいや、今となっては会わせたくないね。俺はここにいたいんだ、帰りたくねえんだよ、頼むあのババアから守ってくれ!」
のらりくらりとした性格に見える彼だが、この話になると、いつも本気の形相である。
「うーん。師匠。この気持ちだけは本当だと思うんですよねえ。どうしましょうか。……セロさん、普段どうやって守護者さまと連絡取ってるんですか? 私にも最近、まったく連絡ないんですよ。あなたを捕まえたこと、やっぱりバレましたかね?」
さらりと尋ね、仕事モードの顔をみせるあなたに、セロも唸りそうになる。
「そ、そうだね。バレてないんじゃね? 俺のことなんてどうでもいいんだから。あのババア今忙しいんだよ」
「忙しい? 仕事ですか?」
「まあ……いや、旅行みたいな…?」
彼はまた斜め上を見て言葉を濁した。
――旅行?
人がこんなに彼女のことで一生懸命になってるときに。
「さん、どうしました? 珍しいですね、あなたの周りから淀んだ空気が出てますよ」
「ははっほんとだ。お前も俺らの仲間らしくなってきたじゃねえか。無視されてむかつくか? ん?」
「別に……そんなことないですし」
なぜだろうか。
最近守護者のことを考えると、よく分からない感情がわく。
数日前、ルドガーが赤兎に嫉妬していたのを思い出した。
彼の感情も独自に強いものがあるが、この思いとは少し違う気がする。
彼女にほうっておかれると、本能的に暴走してしまいそうな気持ちが生まれるのだ。
「はあ。なんでだろう。たぶん早く会いたいんだろうな。悪い人でも、いい人でも…」
魔界に来て、初めてルドガー以外で自分のことを何もないところから気にしてくれた存在だからかもしれない。
素直にこぼすと、二人の立場の違う魔術師は、なんだかよく分からない眼差しで眺めていた。