第8章 【最終章】未来の先、変わらないもの
ーーーー数年後。
奥村side
御幸先輩達の卒業後も
何度か甲子園へ行った青道。
そして、今では——
「よぉ、来てたのか」
「倉持先輩、お久しぶりです」
大学での練習がオフだったから
少しだけグラウンドに顔を出して練習を見ていたら倉持先輩が来た。
「ここは変わらねぇな」
そう言って野球部の練習を見る倉持先輩。
「倉持先輩は大変そうですね」
「ん?何が?」
「御幸先輩の記事が出る度、倉持先輩もインタビュー載ってますよね」
「あー……」
「この間は憧れの選手を聞かれてたのにさんのこと答えてましたよね、あの人」
「あいつの事、彼女として話さねぇくせにそう言う時だけ話すからこっちも気遣ってめんどくせぇんだよ」
倉持先輩は心底めんどくさそうにそう言った。
「そういえば、自分も一度だけ御幸先輩が高校の時どんな選手だったか聞かれました」
「おっ。なんて言ったんだよ」
「……捕手として越えるべき存在、と」
俺がそう答えると、倉持先輩は少し驚いた顔をした。
「へー、意外。お前案外御幸の事買ってたんだな」
「まぁ、一応」
最初は嫉妬が優ってた。
同じ捕手としても、
一野球人としても、
尊敬してるからこそ
勝てないと思いたくなくて嫉妬してた。
けど、
『一也から学べるもの多いと思うよ』
さんにそう言われてから、御幸先輩を知ろうとした。
そして、
知れば知るほど、嫉妬してる自分がバカらしくなった。
あの人は、
俺のその感情もすべて受け止めてくれるくらい
器のでかい人だったから。
「……おっ。噂をすれば」
倉持先輩の視線が遠くへ向く。
振り向くと、
そこには御幸先輩の姿があった。
御幸先輩はグラウンドの方から目を離すことなく
ゆっくりこっちに向かって歩いていた。
「よぉ。今日はオフか?」
倉持先輩が声をかけると、
御幸先輩はようやく視線をこちらへ向けた。
「なんだよ、お前らも来てたのか」
「たまたまな」
「御幸先輩はオフの度来てますもんね、卒業後もずっと」
「……るっせ」
俺の言葉に再び視線をグラウンドへ戻した御幸先輩。
その視線の先には、
卒業後も変わらず青道へ足を運び続ける理由があった。