第8章 【最終章】未来の先、変わらないもの
御幸side
「……そうか」
から家の中に通されるのは初めてじゃない。
それでもどこか緊張が拭えなかったのは
この話が待っていたからだったのか。
遠距離になる事も頭では理解できてた。
覚悟もできてたつもりだった。
けど、の志望校を聞いた瞬間
少しだけ揺らいだ。
稲城大学か……。
順当にいけば、稲実の連中がエスカレーターで上がっていく大学だ。
スポーツマネジメントを学べる大学なら、
他にもある。
それなのに、あえて稲城大学を選んだ理由は……。
鳴はドラフト候補だ。
大学へ進まない可能性の方が高い。
……けど、ほかの稲実の連中は違う。
あいつらが大学野球部へ入れば、
も誘われるかもしれない。
もし、その誘いを受けていたら――。
そんな想像が頭をよぎり、
理由も分からないまま胸の奥がざわついた。
俺が俯いて言葉を選んでいると
はゆっくりと俺の横に座って口を開いた。
「大学は学部だけで選んだの。プロ球団へのインターン制度があるらしくて」
「勘違いしないでね。稲実があるから選んだわけじゃないの」
の言葉に少しだけ胸を撫で下ろした。
それもつかの間、続けられたの言葉に俺は目を見開いた。
「それと、大学の野球部に誘われても入るつもりなくて、一也はあの話、監督から聞いてる?」
「あの話?」
俺が聞き返すと、は小さく頷いた。
そして、監督から持ちかけられた話をゆっくりと語り始めた。
話を聞き終えた俺は、思わず息を呑んだ。
「……へぇ。んで、どうするんだ?」
「私は……やりたいと思ってる」
少し俯きながらは続ける。
「でも、そうなると今まで以上に一也との時間が取りにくくなるから……一也に相談してから返事しようと思って」
「……はぁ」
俺は小さくため息をつくと、
は少しだけ俺の顔を伺うように視線をあげた。
「俺がのやりたい事止めるかよ」