第8章 【最終章】未来の先、変わらないもの
少しの沈黙の後、
先に口を開いたのは一也だった。
「逆に聞くけどよ。もし、今回の事でダメになったとして
俺がプロ諦めるとでも?」
「そんな事……」
そんな事はない。
一也の諦めの悪さは誰よりもわかっている。
そして、プロに行くために
一也が人一倍野球に人生捧げてるのを私が一番知っている。
だからこそ、野球から見放される悲しみを
一也には味わって欲しくはない。
「それともなにか?俺がプロに行かなかったら、嫌いにでもなる?」
私が続く言葉を探していたら、一也が吐き捨てるようにそう言った。
「それはない!」
私は即座にそう答えた。
笑顔で野球をしている一也が好き。
野球をしてない一也は見たくない。
けどそれは、
一也がプロに行くのか行かないかとか、
そんなの関係ない。
私が、ずっと俯いていた顔をあげると
一也はふっと笑った。
「なら、なんの心配も要らねぇよ」
そう言いながら一也はカバンから小さな箱を取り出した。
その箱を開けると二つのリングが入っていた。
一也は片方のリングを手に取ると
「お前は俺を信じて、俺だけを見てりゃいい」
そう言って私の左手の薬指にリングをはめた。
そして、そのまま触れるだけのキスを落とす。
「俺は絶対裏切らない」
真っ直ぐ私を見つめるその瞳から、
私は目を逸らすことができなかった。
――は何も悩まなくていい。
――安心してこれからも俺のそばにいろ。
言葉にされていないはずなのに、
そんな想いがまっすぐ伝わってくる気がした。