第8章 【最終章】未来の先、変わらないもの
御幸side
「なんだよ、あの反応……」
関係を進めたくないわけじゃない。
そう言って不意に先にキスをしたのはだった。
その仕返しのつもりのはずが、
勢いよく逃げられた。
びっくりして赤面するぐらいかと思ってた。
繋いでいたはずの手に少し視線を落とすと、
さっきのの驚いた顔が目に浮かんで、
少しだけ頬が緩んだ。
……次はどんな反応すんだろ。
そんなことを思いながら俺は帰路に着いた。
夢主side
翌朝。
「お、おはよう……」
玄関先で待っていた一也に、ぎこちなく声をかける。
昨日のことを思い出して、目を合わせるのが少しだけ恥ずかしい。
一也はというと、
いつも通りみたいな顔でそこに立っていた。
「行くか」
ただそれだけ。
何もなかったみたいに繋がれた手は、
昨日と同じ温度だった。
「そういえばどこ行くの?」
「行けばわかる」
そう短く返した一也に
私はそれ以上聞くのをやめた。
なんだか、その方が私達らしい距離感。
そんな気がした。
そうこうしてる間にたどり着いたのは
小学生の頃よく一也と来ていた
プロの二軍戦の試合だった。
「懐かしいー!」
「自分の野球ばっかりで全然これてなかったからさ、久しぶりにゆっくり観ようぜ」
「うん!」
私がそう返すと一也は用意してあったチケットを出して
球場へ入った。
さっきまでのぎこちなさは嘘のように
私達は自然と横に並んで試合を見た。
どっちを応援するでもなく
ただプレイを見ていた私達。
「あれ、さっきまでフォーク使ってなかったよね!?」
「あぁ、ここに来て配球変えたんだな」
「こっちもツーシームメインに変えてきたね」
「さっきまでのストレートが効いてるから打ち取れるな」
気がつくと、デートとか、恋人らしいとか
そんな事忘れていつもの空気になっていた。
だからだったのかもしれない。
「調子いい時の沢村くんの制球ならいけそうだね」