第8章 【最終章】未来の先、変わらないもの
少しだけ視線を落とし、
何かを考えるように黙り込んだ一也。
「……別れたいとか、そういう事じゃないからね?」
私がそう言うと、一也は
なんで分かったのか、とでも言いたそうな顔をしてこっちを向いた。
「私ね、プロ野球でもマネージャーやりたいの」
私はそのまま言葉を続ける。
「選手として野球やってた時も楽しかったけど、改めて青道でマネージャーをやって、視野が広がったっていうか……」
「私が本当に見たかった野球はこっちかもしれないって思えたの」
私がそう言うと、
さっきまでどこか暗かった一也の顔が少し晴れた。
「なら、俺も腹くくるしかねぇな」
そう言って、
一也は繋いだ手を少しだけ握り返した。
「……先に行ってる」
少しだけ笑うと、
「絶対に来いよ」
そう言った一也の笑顔には
どこにも迷いはなかった。
「うん」
私もつられて頬が緩んだ。
御幸side
プロ入りに迷いがある訳じゃない。
ただ、との将来を考えた時に
安定した生活を保証できる自信はない。
だから、ついてこいなんて無責任すぎて言えなかった。
なのに……
「行かないから」
なんて先に言われたことに、驚きが隠せなかった。
「やりたい事がある」
まっすぐな目でそう言い切ったに
俺は「そうか」としか言えなかった。
やりたい事はなんなのか、
俺との関係はどうするつもりなのか。
考えれば考えるほど
自分が女々しく思えて何も言えなかった。
けど、そんな俺の不安は一瞬にしてなくなった。
「……別れたいとか、そういう事じゃないからね?」
少しだけ俺の顔を覗き込むようにそう言った。
目線があったのを確認するとは言葉を続けた。
プロ野球のマネージャーをやりたい事、
選手としてより、今の方が充実していた事、
それを楽しそうに話すに俺は目が離せなかった。
そして、それが俺の覚悟にも繋がった。
と野球。
両方とも俺の手元にある。
そんな未来を迎えるために……
「俺も腹を括るしかねぇか」
「絶対、来いよ」
今を大事にしたい。