第8章 【最終章】未来の先、変わらないもの
「……お前ら、変なところ似てるというかなんというか。あれだ、もうカップル通り越した夫婦だな。」
「どういう例えなの……」
少しだけ笑みがこぼれた。
けど、
「……御幸は知ってるのかよ」
倉持くんは声色を変えずに聞いた。
私は少しだけ息を整える。
「知らないと思うよ。そもそも進路の話してないし」
そして、あっけらかんと答えた。
「まぁ、言ったら言ったであいつめんどくさそうだもんな。余計なこと考え始めそうだし。」
「そうそう。だから内緒にしてね」
「タイミングみて、自分の口でちゃんと言うから」
私はそう言って真っ直ぐ倉持くんを見た。
「そうかよ。まぁ、バレないように頑張れ」
「ありがとう。また明日ね」
「おう」
私は倉持くんの短い返事の後、職員室へ足を進めた。
長いこと出せてなかった
進路希望調査書を提出するために——。
御幸side
「本当に良いんだな?」
監督から何度目かの確認をされる。
「はい。よろしくお願いします」
俺が監督に渡したのは、記入済みのプロ志願届だった。
「これを出したからといって、大学受験ができなくなるわけじゃないんだぞ」
「……分かってます」
それでも俺は決めていた。
センター試験だけは受ける。
けど、大学受験はしない。
野球を続けるなら、プロになって。
野球で食っていけるようになる。
それが、今まで自由に野球をやらせてくれていた親父への、せめてもの恩返しだと思っていたから。
「学業の成績だけとっても、お前はそこそこの大学を選べるんだ。後悔しない道を選べ」
「ありがとうございます。では失礼します」
そう言って俺は監督室を後にした。
「将来……ね」
誰に言うでもない言葉がぽつりと口からこぼれた。
ふと脳内にの顔が過ぎった。
は……
なんて言うだろうか。
監督と同じように、
「滑り止めくらい決めときなよ」
と笑うだろうか。
それとも——。
そんなことを考えながら歩いていたら
約束の場所で待つの姿が目に入った。