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約束の未来へ【御幸一也】長編

第7章 【第4章】選ばなかった未来_時間


「つまり初球から来る準備しとけってことだろ?」
「そういうこと」

私がそう言うと

「へぇ」

白河くんも興味深そうにスコアブックを覗き込んだ。
その様子を見ていた国友監督が静かに口を開く。

「参考にしてみろ」

その一言で話は終わった。
選手達はそれぞれの表情で頷きながらベンチを立つ。

そして——

八回裏。

試合が大きく動くことになる。

打順は一番、カルロスくんから

その初球。

——カキン

甘く浮いた球を見逃さなかった。

つまりながらもセンター前に落ちた。

「……よしっ」

思わず小さく拳を握った。

カルロスくんは一塁上で軽くこちらを見て、
ニヤリと笑った気がした。

続く白河くんへの初球は厳しかった。

けれど——

白河くんはファウルで粘り、
際どい球を見極める。

その間にカルロスくんはスタートを切り盗塁成功。

ノーアウト二塁。

ベンチの空気が変わる。

そしてフルカウント。

ストライクを取りに来るしかない場面。

――カキン

白河くんの打球は鋭く一二塁間を破った。

カルロスくんが一気にホームへ還る。

「よっしゃー!」

ベンチから歓声が上がった。

一点差。

その後も打線は途切れなかった。

安打が繋がり、
ついに——

「セーフ!」

重苦しかった空気が一気に吹き飛ぶ。
スタンドからも大きな歓声が上がった。

私は無意識にスコアブックを握りしめていた。

5ー5の同点に追いつき、
試合は、振り出しに戻った。

九回表。

再びマウンドに上がった鳴に自然と目が向いた。

——ズバンッ

落ちることない球威。

一也のミットへ収まる重たい音がグラウンドに響く。

その光景に、ふと
去年、鳴から言われた言葉を思い出した。


——もし、一也より先に出会ってたら俺を選んでくれた?


あの時は答えられなかった。
想像も出来なかったから。

けれど——

視線の先では、
鳴が全力で腕を振り、

その球を一也が受け止めている。

東京代表だから見られた景色。

本来なら交わることのなかったかもしれない二人が、
同じユニフォームを着て戦っている。

その光景が、どうしようもなく嬉しかった。

今も正直、答えは分からない。

けど——

今、この瞬間が続けばいいな。

そう思ったのは、
紛れもない事実だった——。

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