第7章 【第4章】選ばなかった未来_時間
「試合を再開します」
審判の掛け声に私は昨日のスコアブックを閉じる。
より一層、今この瞬間の試合に目が離せなくなった。
初めからそこに居たかのように
ホームベースへ座る一也。
視線を合わせた二人。
鳴は小さく頷くとセットポジションにつく。
そして、初球。
——ズバンッ
外角低めに力強いストレートが決まる。
御幸side
……重てぇな。
「打てるなら打てよ」とでも言いたげな球は
バッターじゃなく、確実に俺に対しての球だった。
……俺じゃない。バッターに集中しやがれ。
「ナイスボール!」
そう言いながらも、
やり返すように力強く返球をした。
意図が伝わったのが、少し眉を顰めた鳴。
次の瞬間
小さく鼻で笑った鳴は
セットポジションへ入ると目つきが変わった。
――ズバンッ。
……そうだ、この球だ。
主審の右手が高く上がった。
「ストライク!」
その声と同時に、
鳴の口元が僅かに吊り上がる。
……最初っから真面目にやれっての。
鳴の勢いは止まることなく、そのまま三人で抑えた。
夢主side
鳴と一也のバッテリーとしての相性は悪くない。
なんならすごく良い方。
だけど……
「ちょっとー!女房役ならもっとちゃんと俺を輝かせてよね!」
「……あー、はいはい」
ベンチに戻ってくると
噛み合ってるのか噛み合ってないのか
分からない会話をする二人。
ベンチにふんぞり返って座った鳴に
一也は呆れたような声で返すと、カルロスくんたちに声をかけた。
「あれいつも?」
「通常運転だな」
「あぁ」
「なんだよ!なんか文句あんの!?」
一斉に返ってきた答えに、
鳴は不満そうに声を上げた。
「まぁまぁ。初球は明らかに一也に喧嘩売ってるような感じの音だったけど、そのあとはいいピッチングだったよ!」
「でしょー!」
私がそう言うと、
鳴は満足そうに胸を張る。
「けど、一也はらしくないね」
私の言葉に少し肩を揺らした一也。
「もう少し変化球混ぜたほうがストレートも生きると思うけど……もしかして、鳴に気を使ってる?」