第7章 【第4章】選ばなかった未来_時間
四回表。
楊くんから代わり今井くんがマウンドへ上がる。
しかし、その空気は一瞬にして崩れた。
インコースを攻めきれないまま
甘く入った球を狙い撃ちされる。
気が付けばじわじわと塁上は埋まり——
同点。
試合は振り出しに戻された。
四回裏
アメリカチームもピッチャーが変わる。
長身で、長い髪を揺らしたサイドスロー。
細身の体からは想像できないほど、球は重い。
ストレートも変化球も、さっきまでとは別物だった。
「……球速もあるし、こっちが本命っぽいですね」
「そうだな」
国友監督も短く同意する。
際どいコースに鋭い球が決まり、
バットは次々と差し込まれていく。
日本打線は再び三者凡退に終わった。
流れは完全にアメリカチームに傾いた。
五回表
さらに二点の追加点を許すと、
スタンドの空気もアメリカチームに飲み込まれていた。
一点が遠い——。
誰もがそう感じ始めていた。
空気が重たいまま迎えた七回表。
国友監督は再びピッチャー交代を告げた。
マウンドに上がった姿に
アメリカチームのベンチがザワつく。
「おい、見ろよ!中学生か?」
「試合放棄かよ」
嘲るような声が飛ぶ。
しかし、その言葉とは裏腹に
マウンド上の空気だけが、妙に静かだった。
——バシンッ
今日の試合の中で、一番重たい音が響く。
空気が、ほんの一瞬だけ止まった。
次の瞬間
グラウンドの空気が変わるのがわかった。
……あー、めっちゃ怒ってる
私は少しだけ相手チームを哀れに思った。
敵としてはとても怖いピッチャーだったのに、
味方になるとこうも心強い。
「鳴!冷静にね!」
私の声に鳴は小さく頷いた。
鳴の強気なピッチングに
アメリカチームのバットは自然と空を切る。
完全に流れは止まった。
そのはずなのに——
私は、どこか不安を拭いきれずにいた。
朝から続くこの胸騒ぎが、形を成していくような
そんな気がした。