第5章 【第4章】選ばなかった未来_景色
「グラウンドの状況は見慣れてたんだけど、スコア書けるようになるには時間かかったんだ」
「試合を見入って手が動かなかったんだけどね」
これからたくさん試合を見る機会はある。
でも、実際にスコアをリアルタイムで書くタイミングは少ない。
「だから、手を止めるくせはつけちゃダメ」
「動かしてたら、書けるようになるよ」
「……はい!」
私と杏奈ちゃんは揃ってグラウンドに視線を戻す。
奥村side
……あの頃とは違う、さんの笑顔。
自分に向けられたものじゃなくても自然と目に入る。
スコアブックの書き方はあの頃と変わっていなかった。
書く前に口に出すところや、
球種やピッチャーの調子で気になったところをスコアブックの端に書いてるところ。
その姿に懐かしさが込み上げる。
もう二度と同じベンチに入ることはないと思っていたから――。
一回表、自分達の攻撃は三者凡退。
しかし、
裏の先輩達の攻撃。
一アウトも取れないまま、エラーが続いて四番に打順が回る。
「九鬼くん、いい球投げてるのにもったいないな」
先輩チームの分のスコアブックも付けていたさんは不意にそう呟いた。
その言葉に落合コーチも頷いた。
「使い方次第では伸びるタイプだね」
「そうですね、けど……今日の所は早めにバッテリー変えときますか?」
「そうだね、色んなパターン見ておきたいし。奥村、浅田とブルペン入って肩あたためておけ」
「はい」
俺はマスクをかぶりブルペンへ向かった。
……やっと見せれる。成長した自分を
夢主side
一回裏、なんとか6点までに抑えた一年生チームだったが、二回にも2点の追加点を許した。
その一方、一年生チームは三回になっても一塁にも進めないままだった。
……川島くんの調子が良いことには変わりないけど、甘い球が無いわけじゃない。
リードにもわずかに遊びが見える。
そこをつけたら……
「口出ししちゃダメですよ」
落合コーチから不意に言われた言葉にドキッとした。
エスパーかと思うぐらいほどに図星を突かれた。
「……はい」
そう言って、私はスコアに集中した。