第5章 【第4章】選ばなかった未来_景色
御幸side
に引き寄せられた手が置き場を探している。
何が起きたのか、
理解できたのはが玄関の戸を閉めた時だった。
一緒に居れるだけで十分だという気持ちと、
のペースで進めれたら、という気持ち。
どっちとも嘘じゃない。
けど――
「……くっそ」
からのキスにやり場のない感情が湧き上がった。
……手を差し伸べる隙すら見せねぇ。
待ってるだけのつもりが、に引っ張られた。
雑念を振り払うように、俺は走って寮へ帰った。
さっきまで動揺してたはずの心臓は別の高鳴りを見せた。
翌日、俺たちは顔を合わせることはなかった。
俺は降谷と渡辺を連れて春大の決勝戦を観に行った。
夢主side
春大の決勝戦の日、
グラウンドでは上級生と一年生での紅白戦が行われていた。
いい機会という事で一年生のマネージャーにスコアを取らせることになった。
上級生チームの方に春乃ちゃんと茜ちゃん、一年生チームの方に私と杏奈ちゃんのペアでそれぞれベンチに入った。
二人とも心配そうな顔をして私の後ろを歩く。
「完璧に書こうとしなくていいよ。私と春乃ちゃんの方でも、それぞれスコアちゃんと書くから気負いすぎないでね」
私がそう言うと、
「はい、ありがとうございます!」
そう答えた二人の表情は少し明るくなった。
はずだった。
試合が始まると
杏奈ちゃんの表情は再び硬くなる。
「えっと……今のは……」
杏奈ちゃんの視線はグラウンドを追いきれず、
手が止まる。
「ショートゴロ、ランナー進塁なし一アウト」
……初球アウトコースのストレート見せといてからのインコースの変化球で仕留める。
ザ王道の配球。
私は自分のスコアを書きながら、口頭でグラウンドの状況を伝えた。
「……なるほど」
杏奈ちゃんが小さく頷きながら、遅れてスコアを書く。
「今は追えなくてもいい。目は徐々に慣れて見れるようになるから。その代わり手は止めちゃダメ。」
私はグラウンドを見ながら言葉を続ける。
「リアルタイムでしか処理できない情報もあるから」
「……はい!」
杏奈ちゃんの返事に、懐かしさを感じる。
「私も、最初からこのスピードについていけた訳じゃないの」
その言葉に杏奈ちゃんは一瞬びっくりした顔をした。