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約束の未来へ【御幸一也】長編

第4章 【第3章】譲れない場所


御幸side

バットを部屋に置いての元へ戻ると、
さっきまでのとは少し雰囲気が違った。

何かを決めたような、
でもどこか迷ってるような顔。

「行くか」
「……うん」

並んで歩き出す。

まだ少しだけ明るい帰り道に
日が長くなったのを実感する。

いつもならの方から
他愛ない話を振ってくるのに、
今日はやけに静かだった。

その静けさは
より一層自分の心臓のざわつきを自覚させる。

「一也、あのね……」

不意にかけられたの声にドキッとした。

「話さなきゃいけない事あるの」

ゆっくりと足を止める。

の真っ直ぐな目は俺を見据える。

……きたか。

俺は静かに頷いた。

どんな事があっても受け止める。
その覚悟はあった。

でも――

の話した内容は
俺の想像を優に越えるものだった。

気がつくと小さくなっていたの手を包むように
俺は手を握っていた。


……クソッ


今思うと入部当初に感じた違和感……

監督や部長に対しての余所余所しさは
人見知りとして片付けるには
長かったように思う。


「……だから、一也に誘われた時は正直悩んだ」
「…………」

何も返せなかった。

隠すのが上手い。
何も気が付かなかった周りの大人。
なにより、その場に居られなかった自分自身。

その全てに苛立ちを覚えた。

「でもね……」

少しだけ声のトーンがあがった。

「練習風景見てるうちに、一也がなんで青道選んだのか、何となくわかった気がして」

「ここは違うって信じたくなったの」
「……そうか」

俺は少し長く深呼吸をした。

野球に対しての恐怖感はもうないに等しい。
そこはもう問題ない。

けど――

不意にあの日のを思い出した。

指先まで冷え小刻みに震える体に
不自然な程の浅い呼吸……。

今ならその反応の全てに納得できる。

長い沈黙の後、
俺は小さく口を開いた。

「……あれは、大丈夫だったのか?」
「あれ?」

は分かってなさそうに首を傾げた。

言葉に詰まりながらも俺は言った。

「き、キス……だよ」

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