第4章 【第3章】譲れない場所
夢主side
……早く会いたい。
光舟くんと話が終わってた私は駆け足で室内練習場に向かった。
あと一つ角を曲がれば……
そんな所で話し声が聞こえた。
「どうせ、の事だろ」
……私?
少し真剣な雰囲気の倉持くんの声に私は足を止めて、
気が付かれないようにゆっくり覗いた。
そこに居た一也は普段見せないような
いっぱいいっぱいの顔をしていた。
何を話しているのか、ちゃんとは聞こえない
けど――
「……なんか気にくわねぇ」
その一也の声に
『無理に聞く気はねぇけど』
そう言った一也の顔が重なった。
私は一也の優しさに甘えて無理させてんだ……
胸が締め付けられるような気持ちになる。
「お待たせ!」
私は何も聞いてないふりをして近寄り、声をかけた。
二人とも一瞬驚いた顔をして固まっている
「……ん?どうしたの?」
「いや別に。なぁ?」
「あぁ」
私も、向こうも、いつも通りを装っている。
……どこか空気がぎこちなかった。
その空気に最初に声をあげたのは倉持くんだった。
「じゃあ、俺部屋戻るわ。も明日な」
「うん」
そう言って倉持くんは寮の方へ向かった。
その背中を見送っていると
「俺らも行くか」
そう言った一也の手にはさっきまで振っていただろうバットが握られたままだった。
「……持ったまま行くの?」
「ん?」
一也は手元のバットを見ると
「あー……」と小さく声を漏らした。
どこか気まずそうに軽く頭を掻く一也。
その姿に思わず小さく笑ってしまった。
「なんだよ……」
「いや、珍しいなと思って」
私がそう言うと一也は
小さく息を吐いた。
「すぐ戻る」
そう言って一也は
視線を送ることもなくかけていった。
私が話す事で、
一也の悩みを増やしてしまうんじゃないか。
ふと、そんな事を思った。
……「お前を想う気持ちは変わらねぇよ」
不安になる度、
何度も思い出してきた言葉。
私は小さく息を吐くと、
一也が戻ってくる方向へ視線を向けた。
……ちゃんと話そう。